Nuendo 8発表会レポート
この度はカナダ大使館にて開催されたNuendo 8発表会に参加しました。
参加は2度目ですが、顔写真付きの証明書の提示や手荷物検査など、さすがは大使館内といったところ。会場にはかなりの人数のクリエイターやゲーム業界関係者が参加していました。
Nuendo 8に関する詳細なレビューはこちら
>> http://miyaji-parec.jugem.jp/?eid=2431
Nuendo 8に関するティザー映像があった後、大島Su-kei氏と声優の小岩井ことり氏の2名が進行を行いました。2名とも日頃からのSteinbergユーザーで、軽快なトークで場を盛り上げていきます。続いては、普段はCUBASEを使っているという小岩井ことり氏に、大島Su-kei氏がNuendoを紹介するという形で、各機能の紹介が行われました。
Nuendoは映画やCM、ゲームでの音響効果など、映像に対して音を編集していくというワークフローに特化したソフトウェアです。一方、見た目はCUBASEそっくりなので、導入の敷居が低いのも特徴です。ADRやReconfirm、そしてNuendo 7から搭載されたGame Audio Connectの概要を説明しつつ、サラウンド対応にも触れながら話を進めて行きました。
QuickTimeに依存しない新たなビデオエンジンが搭載、既存の形式だけでなくAVID社DNxHR/DNxHDコーデックもライセンス購入により対応可能です。
会場を沸かせたDirect Offlice Processing機能。
クリップごとにエフェクトが設定可能で(複数クリップの一括変更も可能)、リアルタイムで変化させることが可能です。Mix Consoleでのインサートに比較してCPU負荷が軽く、サードパーティ製のプラグインも使えることが特徴です。
ReNamerでは、csvを利用してファイル名の変更が可能。「無音処理」→「ReNamer」→「レンダーエクスポート」などによるスマートな一括処理を見て、小岩井ことり氏からも「このまま納品ができますね!」というコメントが出ました。
ToneやPitchなどのバリエーションを無限に作り続ける新規追加のVST Plugin「Ramdomizer」。単一のクリップをCtrl+Dで複製し、そのままインプレイスレンダリングをすれば、複数のバリエーションが自動的に生成されていきます。小岩井ことり氏からは「ガヤを録るのに便利そう」「声のバリエーションを用意するのも大変な時があるから、そういった時に便利そう!」というコメントがありました。
イマーシブオーディオ対応についても紹介されました。VSTコネクションには22.2chなど全てデフォルトで見えており、大島Su-kei氏も「現在の規格であるものは殆どが作れてしまう!」と語ります。
そして、多くのクリエイターにとって朗報となる「Nuendo NEKの統合」についての発表もありました。Nuendo 8はCUBASE PRO9と完全に統合され、既存のNEK追加購入制度がなくなりました。これによって恩恵が大きいのは、1画面でのUI適用とMix ConsoleのHistory機能だと大島氏は語ります。また、ゲーム会社などのコンポーザーはCUBASEユーザーが多いため、Nuendoを導入すればnpr形式でファイルのやり取りが容易になるとのことです。
渡辺寛永志氏による事例紹介
続いては、実際の事例に基づいたトークセッションが行われました。
事例となったのは、今年7月に公開される「東京グール」。録音・MAエンジニアの渡辺寛永志氏が登壇されました。
最初に監督の荻原 健太郎氏からのメッセージビデオが再生されました。同作はアフレコよりも同録中心でやりたかったそうですが、実際にNuendoのADR機能を使ってみると様々な良い点があったと荻原氏は語ります。
ADR機能は、ダイアログのレコーディングやローカライズの際、マーカートラックと統合されたADRパネルにナレーション位置や演者などの情報を集約する機能です。渡辺氏は役者ごとにマーカーを切り替えて用いて、アフレコを進行したそうです。本来アフレコはタイムコード、台本、演者の表情全てを目で追いかけながら行う必要がありますが、ADR機能を用いれば画面上に全ての情報が集約されるため、演者にとっても非常に良好な環境が構築出来るとのことです。
また、任意にスピード変更が可能なスワイプによって「どのタイミングで喋るか」が視認できることによって、オフ台詞(演者の口が写っていなかったり、別画面が表示されているシーンの台詞)のタイミングのとり方もすごく楽になる、といった小岩井氏の専門的なコメントもありました。
その後はFinal Fantasy 14のテレビCMの実例がありました。こちらでもADR機能が活用されており、声の演技に慣れていない俳優の方などにとっては「画面だけを見ながらアフレコが出来る事」がメリットとなり、自然な演技が行えたと渡辺氏は語ります。
Game Audio Connect 2について
10分の休憩の後は、Audiokinetic株式会社Sound Design in Residence 牛島正人氏によるGame Audio Connectについての紹介がありました。そもそもGame Audio Connectとは、NUENDOで作業したデータをWWISE上に直接インポートが可能な機能ですが、Nuendo 8からは「Game Audio Connect 2」に進化し、単一のクリップだけでなく複数トラックに及ぶInteractive Music対応となりました。
インタラクティブミュージックとは、「ゲームプレイヤーの動的変化に伴って発生するイベントに基づいて変化する音楽」と一般的に言われています。ゲームの場合はプレイヤー操作があるため、ゲーム内で再生される音楽は映画やドラマのように時間軸の演出が固定化出来ません。そういった理由から、動的な音楽表現が求められています。UBIから発売となっている『Assassin's Creed Black Flag』のインタラクティブミュージックのフローチャートが事例として挙がりましたが、複雑な遷移を持つゲームコンテンツにおいて、どのタイミングで音を止める/鳴らす、というのをフローチャートによる設計図で考えることが重要です。
複雑なインタラクティブミュージックを実装する際、トライアンドエラーは必須です。すなわち、出力の回数が多いという事です。
そこで、NUENDOからWWISE2017.1にTime SignatureやTempoなど細やかな設定を直接インポート出来るような仕組みが開発されました。ここでは、Game Audio Connect 2を介して、ステムデータのインポートの実演が行われました。
続いてはKLabのサウンドチームから2名をゲストにお呼びして、講演が行われました。
標葉 千晴氏は、同社が開発を担当する『BLEACH Brave Souls』という3Dアクションゲームを題材にし、NUENDOを用いた必殺技MAのワークフローについて説明がありました。主人公の必殺技のMAをNUENDOで製作し、それらをまとめてWWISEにインポート後、Unity上で再生を行うといった形の実演がありました。
続いては阿部公弘氏よる、「NUENDOでBGMを作成する。」という内容のセッションが行われました。
「Nuendoはポスプロ以外もこなせます」と語る阿部氏ですが、実際の制作もNuendoで行っているそうです。今回は同作のメニュー画面の楽曲を題材として、楽曲のMIXやインサートエフェクトへのこだわりの説明がありました。
Nuendo 8の販売価格および今後のキャンペーンについて
最後に、YAMAHA 豊浦氏から製品情報のご紹介がありました。
価格情報等はこちらをご覧下さい >> http://shop.miyaji.co.jp/SHOP/list.php?Search=Nuendo
また、8月以降に「CUBASE及びPro Toolsからのクロスグレードキャンペーン」が開始される旨が告知されました。
最後に、SternbergのWEBサイト及び動画サイト「FRESH!」の告知がありました。
従来のポストプロダクションだけでなく、制作までを一貫して行うことが出来るようになった「Nuendo 8」。宮地楽器としてもしっかりと取り扱って参りますので、仕様などでご質問などがございましたらお気軽にご連絡頂ければと思います。
以上、Nuendo発表会レポートでした!
お問い合わせ先