普段、Focal SM9、Trio 6 Beをメインモニターとして使用しているFocal好きのエンジニア、ニラジさんによるレビューです。
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15年ほどで様々なスピーカーを試してきたが、昨年FocalのTrio 6 Beに落ち着いた。理由は見た目(笑) そして、音を聴いてテンションが上がるから。初めて音を鳴らした時「これだ!」と思った。そのスピーカーからかっこいい音が鳴ってくれる。この音で音楽を作りたい。そう思わせてくれるサウンドを持っていたのがTrioだった。
エンジニア目線でのスピーカー選びで、1番重要なのはやっぱり見た目!音じゃない!1日10時間以上こもる部屋を「仕事場」とは思いたくない。家と思いたい。だからこそ、僕のスタジオのコーディネートのこだわりは強い。
今回Shapeシリーズを初めて聴いて、まず何に驚いたかと言うと、見た目(笑) ずっと目の前に配置されるスピーカーを見てテンションが上がるかどうかがやっぱり重要だ。(※ニラジ氏は木目調が好きで、NK Sound Tokyoの内装もウッドテイストで統一されている)
↑Focal Shapeシリーズ。木目の本体に麻のコーンが、ナチュラルで美しい。
スピーカー選びの続きだが、音において重要な3pointは「Axis(左右・上下・奥行き)」だ。どこまで"スピーカーの中"が見えるか、というところが着眼点だと思う。だが、何が良いかは人それぞれで、鳴らす環境や音量によりけりである。僕の場合は、普段のミックスの時にスピーカーを非常に小さい音で鳴らすため、小さい音でどこまでしっかりフラットに鳴ってくれるかが重要なポイントだ。Focal/Shapeを初めて聴いた時、「(メインモニターである)SM9が無くても良いな」と思ってしまった。少し奥まった場所に離して置いているSM9と、近くの卓上に置いたShape、同じ音がするなと思ったんだ。もちろん、SM9とShapeシリーズには多少のニュアンスの違いはある。ただ、人間の耳は、その差にはすぐに慣れてくれる。
僕の耳に合っているFocal社のスピーカーやヘッドホン。各社が様々な技術を踏襲して「フラット」と言うが、本当にフラットなのはどのスピーカーか…という問題ではない。各社の「フラット」がエンジニアの耳・理想とリンクするかどうかがポイントだと思う。Focalの掲げるフラットと、僕の思うフラットがリンクした結果が、僕のスピーカー選びの最終回答だ。
<ここで、アカペラの曲・オケ入りのバンドサウンドをShapeで聴いてみました!>
Shapeはウーファーのサイズによって40,50,65と3種類展開されているが、どのサイズもほぼ同じサウンドに聴こえる。ただボリュームを変えただけではないかと思うほどの差しかない。そして、ボーカルに掛かっているリバーブ・ディレイが非常にクリアにしっかり聞こえてくれる。
また、普通のスピーカーはボリュームを変えるとカーブ(バランス)が変わってしまう。しかし、Focalは今まで出会った中で一番ボリュームによるバランスの変化が無い。中でも、Shapeシリーズは特にその傾向が強い。ボリュームを絞っても同じバランスで聴くことができる。
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ニラジさんがたっぷりと語ってくれたので、こちらは簡潔に。サウンドに関するポイントは大きく3点(ほぼニラジさんと同意見!)。
1.空間が非常によく見える
空間系が本当にしっかりと聴こえてくれるのが特徴のスピーカーであると感じました。リバーブの尾ひれもとてもシルキーで綺麗に聴こえるし、ディレイのタイミングや回数も確実に確認できます。
2.ワイドが広い
普通のスピーカー(と言っては語弊があるかも…)に比べて、1.5倍くらいワイドレンジが広いです。奥行きも、先述の通り空間がしっかり見えるため、定位の確認もし易いです。
3.小さな音でもバランスが崩れない
ボリュームを絞っても、逆にガンガン出しても、全体のバランスがほとんど変わらないのです。ただただ音量の大小が変わるだけ。そんなイメージでした。ホームスタジオで大きな音が出せない…という方や、普段ボリュームを絞ってミックス・マスタリングをされている方にとって、本当にうってつけのスピーカーだと思います。
あとは見た目ですね。木目の本体・天然の麻が素材のコーンが本当にオシャレです。
↑新設のブロンズ・スタジオに配置されたShapeシリーズ。実は本日、このブロンズ・スタジオのお披露目会でもありました。
Focal本国スタッフのザビエルさん、国内代理店メディア・インテグレーションの北木さんによる技術解説。簡潔にご紹介します。
※読み飛ばして頂いてOKです →「まとめ」へ飛ぶ
※その場でメモしたものをほぼそのまま掲載しています…乱雑でごめんなさい。
革新的なアナログ・ソリューション「Focal Shape Series」。
1.コーン
「フラックス」という素材(=天然素材の"麻"。フランスで手に入る、スピーカーにとって最良な素材)でできている。サンドイッチ・コーン(=Glass,Flax,Glass という順でFlaxをコーティング。それぞれ厚み0.04mm)。
↑素材"フラックス"。「ちょっと良さそうな麻」でした。
2.TMDサラウンド(チューンド・マス・ダンパー・サラウンド)
スタジオモニターにて一番あってはならないものは「歪み」。Focalが一番重要視しているのは歪みの軽減。ドライバーの特定の位置に重量を加えることで、1〜3kHzがいい感じに。歪み率50%減!
3.マグネティック・サーキット
最適化されたファラデー型リング。磁界を大きく安定化させることができ、コンプレッションなどの副作用もない。
→中低域の歪みを50%削減。
4.Mシェイプ・インバーテッド・ドーム・ツイーター
<シェイプについて>
Mシェイプは振動に対してナチュラルに動いてくれるため、歪みが大幅に軽減する。
■一般的なドーム型ツイーター:指向性が狭いため、スイートスポットが限られる(動くと音が変わる)。
■インバート:一般的なドームに比べスイートスポットが広い。多少動いても問題ない。軽量化が図れる(スピーカーにとって重要なファクター)。
<素材について>
ツイーターの素材は、アルミとマグネシウムの合金(CMSシリーズで使用していたものと同一)。スタジオモニターの特性は、フラットであることが重要。
■ピュア・アルミニウム:10kHzまではフラットだが、それ以上が上がっていってしまう特性を持っている。
■アルミ+マグネシウム:重量が若干増える。それによって、10kHz以上も安定する。
5.ツイーター・ウェーブ・ガイド
水平でも垂直でも、指向性が均一となる。周囲からの振動を抑えることができるため、理論的に指向性が統一される。
6.パッシブ・ラジエーター
コンパクトなサイズながら、SPLと周波数特性の向上を図れる。
メカニカル・リミッター搭載:左右の鳴りが均一に。位相の乱れなどがなくなる。
7.フレキシブルな設置
■天吊、壁掛け、テーブル置き、マイクスタンド・マウント用スレッド、K&M設置金具対応
■リムーバルグリル(ツール不要)
■角度調整ツール付属
8.機能
■レベルマッチング機能搭載
■リアに3種類のEQ搭載
9.Shapeシリーズラインナップ
ウーファーのサイズごとに、以下の3種類を展開。
■Shape 40:聴き手との距離 60cmを想定。ペア¥98,000(税込)
■Shape 50:距離80cm。ペア¥119,600(税込)
■Shape 65:距離1m。ペア¥159,600(税込)
10.Focalシリーズ・ラインナップ
Alpha→[Shape]→SM6→SM9 の順でプロユースに。Shape以上はフランス製。
廃盤になったCMSシリーズと同じ位置付けではあるが、技術的にはCMSのバージョンアップ版ではなく、全くの新しいモデル。シリーズによって特徴はあれど、どの機種でもFocalサウンドが鳴ってくれる。AlphaでもFocalの誇るサウンドが鳴らせるし、アップグレードの際も自然に移行することが可能。
40,50,65と3種類ありますが、どれを選択すれば良いでしょうか?
Neeraj:「正直どれを選んでも同じだ。その人の部屋のサイズや環境に合わせてあげればいい。他のメーカーのスピーカーは、ウーファーのサイズによって大きくサウンドが異なることがあるが、Shapeシリーズはそれがない。」
ちなみに宮地スタッフ的には、今日聴いたNK Sound Tokyoの環境では、50が最もバランスが良かった印象でした。
店頭デモ機が来たら、サウンドの印象をもっとしっかりレビューしたいと思います!
エンジニアNeerajさん、Focal本国スタッフXavierさん、Media Integrationの皆様、ありがとうございました。
発売日
2017年7月
価格(表記は全て税込です)
Focal Professional Shape 40 1本¥49,000、ペア¥98,000
Focal Professional Shape 50 1本¥59,800、ペア¥119,600
Focal Professional Shape 65 1本¥79,800、ペア¥159,600
代理店Media Integration:Shapeシリーズ製品ページ
→ http://www.minet.jp/brand/focal/shape-series/
NK Studio Tokyo facebook
→ https://www.facebook.com/studioinjapan/
取材:澤田/登井
記事担当:登井
- 2017.06.09 Friday
- 機材レビュー