AKGハンドヘルドマイクのフラッグシップモデル。発売より長らくプロのステージで高い評価を受けている、AKGの最上位ハンドヘルド型マイク「C535 EB」の抜けが良く華やかなサウンドを踏襲しています。
カプセルを「グリル」「高密度スポンジ・フィルター」「マグネット着脱式メタル・フィルター」の3層で保護した構造です。
複数の技術の組み合わせで、様々なノイズを極限まで低減することが可能です。
カプセル
重厚な土台と、振動を吸収しやすいゴムを使用したショックマウントがカプセルを支えています。これらでダイアフラムを制振することで、ハンドリングノイズや、本体の共振から発生するノイズなどの影響を受けづらい仕組みになっています。
マグネット着脱式メタル・フィルター
一番外側のグリル(アミアミの部分)を取り外すと、中にもう一つ、磁石で着脱ができるフィルターが入っています。
↑マグネット着脱式メタル・フィルターを装着した状態
↑外した状態
グリル&高密度スポンジ・フィルター
グリルの内側には、スポンジが取り付けられています。これは最も定番のSHURE/SM58-LCE等とも同じ構造ですが、AKG/C636は非常に密度の高いスポンジが使用されており、よりポップノイズへの耐性が強くなっています。
↑グリル内側の接写。ブレていてすみません…
この3層構造によって、ポップノイズをはじめ、中高域のノイズの影響を最小限に抑えることが可能となっています。
ハイパス・フィルター
80Hz以下をカットするハイパス・フィルターのスイッチが、本体背面についています。ライブなど低音を拾ってしまいやすい環境で、声以外の不要な成分をカットできます。
↑背面のスイッチ。つまようじやシャーペンの先などで切り替えられるようになっている、窪んだタイプのスイッチなので、ライブ中に誤って切り替えてしまったりといったリスクもありません。
上記で紹介したような技術を用いて、様々なノイズを極限まで抑えています。そのためS/N比(※)が非常に良く、いわゆる「原音忠実」なサウンドを作り出すことが可能となっています。
(※S/N比=シグナル対ノイズ比。本来必要な音に対するノイズの割合)
AKG/C636のサウンドを、実際に録音してみました!
AKG/C636は、非常にナチュラルなサウンドだと感じます。解像度や分離感はもちろん高く、ちょっとしたニュアンスもしっかりと伝わってくれるのですが、それを誇張しすぎることもありません。
私は最初にサウンドを聴いた時に、「奥行き感がある!」だったり「すごく色気があるね!」といった、何か特徴的な感想を抱くことはありませんでした。それが、このC636の良さだと思います。「マイクを通した」という色付けを感じさせない、原音忠実で非常に自然なサウンド。ボーカリストの良さや個性を、そのまんま聴き手にパスしてくれるマイクだと感じました。
ひとつサウンドの特徴を挙げるとすれば、高音の抜けが良いことでしょうか。音の重心も高すぎず低すぎず丁度良い場所にあるので、しっかりと声の芯を捉えつつも、安定して音が抜けてくれます。バンド馴染みも良く、華やかな印象も与えてくれるでしょう。
また、指向性が割と鋭めだと感じたので、コンデンサ特有の「周りの音を拾いすぎる」というリスクが軽減されています。「感度が良すぎてハウるんじゃないか…」とコンデンサに手を出せなかった方も、このマイクはぜひお試し頂きたいなと感じさせてくれました。
今回は騒音の少ない静かな環境で録音したので、ハイパス(ローカット)とそうでないサウンドの違いがあまり明確には出ませんでしたね…。それでもハイパスをONにした2番めの音源は、よりスッキリとした聴き心地になっているのが分かります。これは実際に使用する現場の環境と、ボーカリストさんの声質によって、その場でON/OFFを決めるような形で探るのが良いでしょう。
AKG/C636、いかがでしたでしょうか。やはりフラッグシップなだけあって、価格もハンドヘルドマイクの中では「高い部類」に属します。それでもトータルで見て、この価格を出すだけの価値はあるマイクだと思います。フラッグシップの名を冠するにふさわしい製品です。
より質の良いハンドヘルドマイクをお探しの方は、ぜひ本製品も選択肢のひとつとしてご検討頂ければ幸いです。
当店 宮地楽器神田店には、店頭でお試し頂けるデモ機もございます。ぜひ皆様のご来店をお待ちしております。
AKG/C636 ¥64,800-(税込)
記事担当:登井/ボーカル:足立
- 2018.05.28 Monday
- 機材レビュー